シカゴ大学の心理学者だったM・チクセントミハイ博士は、1990年に出版した彼の著書で、
「フロー」という考え方を提唱しました。英語のFlowは、流れという意味で、
フローとは、文字通り人生や今おこなっている行為が流れに乗っていると感じる感覚や状態のことです。
彼はフローを「人が全人的に行為に没頭しているときに感じる包括的な感覚」としました。
そしてフローを経験するための条件として、自分の能力にちょうどよい行為をしていることをあげています。
要するに、自分にぴったりしたことを行っているときに、その行為に自分のすべてを没入でき、
言葉には表現できない充実感や喜び、そして今この瞬間こそ生きているのだという感覚を味わえるということなのでしょう。
このフロー感覚は、たとえばチェスや将棋、また囲碁をやっているときなどにも感じることがあります。
次に打つ手がまるで流れに乗ったように次々と決まって、ゲームが進んでいくときなどです。
それはトランプゲームでも起こります。
自分の都合のいいカードが自分の手元にめぐってきて、うまく行くようなときです。
その時ちょうどタイミングよく自分の手元によいカードが回ってきたというのが1回ならば、
それは小さなシンクロニシティです。しかし、まるで幸運の女神がついているように、
そういうことが次々と起こると、もうそれはフローにほかなりません。
… 最近、フローについての研究がいろいろな人によってなされるようになりました。
そのなかでもアメリカの人間科学者チャーリーン・ベリッツとジャーナリストのメグ・ランドストロムは、
フローをシンクロニシティの延長線上にあるものととらえ、
共著『パワー・オブ・フロー』
(河出書房新社)で、彼らのその考え方をわかりやすく説明しています。
彼らはこの本の中で、フローが働いているときは、
ものごとが落ち着くべきところに落ち着き、障害が消え、タイミングが完璧で、
お金や、仕事、人間、チャンスなど必要なものは何でも必要なときに手に入る、と説明しています。
もし本当にそうだとすると素晴らしいことです。また、私たちの人生は常にそうありたいものです。
そして、そのような状態で生きていくことこそ、本当の幸せといえるでしょう。
フローが働いているときは、おそらく私たちの心の内側にある思考エネルギーや感情エネルギーが、
私たちの外側で起こっている出来事やそのエネルギーと結びついて、
それらが一定のパターンでかみ合い、共鳴しながら、一体となって現象しているのでしょう。
そのため、私たちは適切な場所で適切なときに適切なことをしているという感覚をもつのです。
それはきわめてスピリチュアルなものであり、
幸せなエネルギーの流れに乗って自分が行くべきところに向かって進んでいると確信するような感覚です。
…
では、そのようなフローとともに日常生活を過ごせるようになるためにはどうすればよいのでしょう。
では、そのようなフローとともに日常生活を過ごせるようになるためにはどうすればよいのでしょう。
アメリカの人間科学者チャリーン・ベリッツたちは、フローの達人と思われる人々にインタビュー調査した結果、
彼らの心の姿勢にはいくつかの顕著な特徴が見られたといいます。
ものごとに真剣にかかわる、自分に率直、勇気がある、情熱を忘れない、今ここに生きる、心に壁を作らない、
ものごとをあるがままに受け入れる、前向きに生きる、信頼する、などだそうです。
したがって、私たちも常日頃から彼らと同じような心の姿勢を持つように気をつけていることが大切なのでしょう。
私の個人的な意見ですが、これらの心の姿勢で一番重要なのは、
「今ここに生きる」という姿勢だと思います。なぜなら、そういう心の姿勢をもっていると、
エネルギー的に自分と世界とが共鳴して、一体となるような状況が生まれてくると思えるからです。
今ここに生きるとはどういうことかというと、現在という瞬間、瞬間に、没頭して生きるということです。
その反対が、「心ここにあらず」という状態でしょう。何かと過去のことに思いを馳せ、古い問題をほじくる。
過去の楽しかったこと、あるいは苦しかったことばかりにこだわる。また未来に思いを馳せる。
あるいは何かの心配事で心がいっぱいになってしまう。
そういう状態では、現在という瞬間に没頭することはできません。
さて、私たちが今という瞬間に没頭しながら生きていると、
シンクロニシティが頻繁に起こるようになって来るようです。
チャリーン・ベリッツたちはシンクロニシティの延長線上にフローがあるとし、
フローを引き寄せるためにはシンクロニシティを頻繁に起こさせることが重要であると説いています。
私もその通りであると思います。人生がシンクロニシティの連続のような状態になったとき、
私は、あなたのシンクロニシティ度をチェックするテストをご紹介いたしました。
あなたの人生において、どれだけの数のシンクロニシティが起こっているかで、
どれだけあなたがフロー近づいているかを調べるものです。
そして、このチェックテストの結果、まだあまりシンクロニシティがそうたくさん起こっていなければ、
どうすればよいのかについて、ひとつの提案をしています。
それは、シンクロニシティかなと思える出来事はどんな些細なことでも日記などに書いておき、
その出来事が自分にとってどういう意味があるのかを考えるというものです。
その意味は、自分の独自性と関連させながらなるべく前向き(ポジティブ)にとらえることが秘訣です。
そうすると、不思議なことにシンクロニシティがたくさん起こるようになってくるのです。
ほおじろえいいち
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