去る五月三日、韓国において、世界各国の首脳級の元老指導者が集い、「世界元老会」(The Elders’ Roundtable)がキックオフされました。
今日、少子化問題とともに、人口に占める高齢者の割合が増加する高齢化問題が、世界的イシューとなっています。老人への虐待や、老人の人権が蝕まれていく現象も、日常化しつつあります。
「世界元老会」は、真のお母様の提唱によって、二月二十四日に世界各国から首脳級の元老たちが結集して推進結成大会が開催され、五月三日、正式に出帆に至りました。
それらに参加したのは、世界の平和構築に尽力し、また自国民の平和と安全のために身を粉にして投入して、現在は一線を退かれている方々が大半です。
見方を変えれば、いわゆる、〝ただの人〟となり、一人の老人として、その余生を生きることを余儀なくされた立場とも言えます。
社会の新しい基盤としての「元老」
「老人」といえば、どうしても保護や福祉の対象として見なされます。社会保障の分野においても、年老いて、介護を受ける世代として扱われ、それに対応する政策が練られます。
しかし、真のお母様は、彼らが生涯を通して蓄えた英知や経験を、「老人」という言葉に閉じ込めて封印してしまうのではなく、むしろ社会資産として生かす道を考えられました。それで、世代を意味する「老人」ではなく、社会の新しい基盤である「元老」として、家庭で言えば祖父母の役割を社会で担うことを目的として、「世界元老会」を提唱されたのです。
老人を社会的弱者と見やすい日本の文化からは到底出てこない概念ですが、韓国では、〝元老文化〟が社会に根づいています。それが、真の父母を迎えた選民の国から発信されることは、とても意義深いと考えます。
個人の人権は「家族人権」が土台
人間は、誰もが家族愛に包まれて誕生します。個人である以前に子女であり、父母を占有して産声を上げます。その子女が成長して夫婦となり、父母となり、そして祖父母となります。家庭という共同体の中で、人生をかけて、子女の心情、兄弟姉妹の心情、夫婦の心情、父母の心情、祖父母の心情を体恤しながら成長します。
正に、人間は、心情的存在なのです。単独では生きることができません。独自的に存在する「個人」である前に、家庭的存在であり、「家庭人」なのです。
人権というテーマで論じるなら、個人主義に基盤を置く人権理解から一歩前進し、家族共同体の中で互いの権利を保護し合い、協力し合う「家族人権」を基盤として考えなければなりません。
このたびの「世界元老会」出帆は、天の父母様(神様)を中心とした人類一家族世界の視点から、祖父母世代、父母世代、子女世代の三世代圏に該当する人権概念を「家族人権」として、今日の社会問題の根本的解決に対する、具体的な提案です。
韓国には、「내리사랑」という言葉があります。「下りていく愛」という意味です。水が流れるように上から下に、愛が流れていくさまを表現しています。
その、下に流れていく愛を、家族共同体にだけではなく、社会や国家に適用したときに、「元老」の重みは増してきます。
元老として位置する壮年世代が、自分たちの経験や英知を、未来世界に責任を持つ青年世代に、愛を土台として伝授していく文化が定着するなら、世代間の信頼が生まれ、多くの課題解決への道が見えてくることでしょう。正に、共生、共栄、共義の共同体となるはずです。
求められる「元老」の制度基盤
愛を土台とする家族共同体をモデルとして恒久的な平和世界を実現するために、家庭で祖父母の立場にいる老人たちが、社会と国家、世界で、元老としての役割を果たしうる制度的な基盤造成が求められます。
加齢を、年老いていくという側面から見詰めるのか、それとも、人生経験を重ねて成熟していくという側面から見るのか。そこには大きな差が生まれます。
老人たちの、「元老」としての健康的な社会参与、そして社会、国家における役割とビジョン、政策も求められます。
天一国は、念仏のように唱えてでき上がるものではありません。「家族人権」の基礎となる、天の父母様を中心とした家族共同体の心情文化構築に、全力で取り組まなければなりません。
その文化の核心的価値は、「孝情」です。祖父母、父母、子女の三代圏の各世代が、天の父母様から注がれる「내리사랑」を受け止め、その愛の伝統が脈々と流れる心情文化こそが、平和世界創建の核心となることでしょう。
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