人材の土壌 李退渓 心情文化研究会

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鈴木喜久子さんより心情文化勉強会にて掲載されたものなどのコラムを寄稿していただきました。

人材の土壌 李退渓 心情文化研究会 

〈 人材の土壌 〉

"韓国には日本では見ることのできない立派な人たちがいる! "韓国に知り合いの多かった父親がそう自分に話してくれたことが強く印象に残っていました、、、。

韓国に渡ってきたある日本の男性の告白(?)ですが、私も全く同感です。 前回,イスンシン将軍そしてお金シリーズを試みようとしたのも、韓国の人たちのきずいてきた人格に触れることを通して、お父様に対する理解も深いものになっていくのではないかと考えたからです。

実は私自身、韓国の偉人と言われる人々の人となりに接することを通して,お父様への理解度が深まったことを実感しています。シベリアのツンドラようなの硬くやせた土壌からではなく、よく耕された豊かな土壌をもってメシアが産み出されることができたんだということを、こちらにきて暮してみて初めてわかりました。

ある先輩の方が、"神は、心情をともにできる民族を育てるため、韓民族をすりつぶしながらひってこられた。""何の外的なものは与えられず、人と思想がこの国に与えられた。

人と思想、、、の土壌を、神がこの国に準備されたのだなあと思います。

先日、風邪で具合いをわるくしていた夫が、家で身をもてあましながら「十八史略」のマンガの本を読んでいました。

韓国で有名な漫画家が出したもので、絵もおもしろいしウイットのきいたせりふ等、こどもたちもおもしろく読めるものです。 もともと韓国の歴史自体が中国の歴史と絡みあって発展してきている面があるためか、中国の歴史に対する関心も高いように見うけられます。

アニメはいまいちの韓国ですが、この類いのマンガはとてもよくできています。 そのむかし読んだことはあっても、すっかり忘れてしまっているので、気休め程度の気持ちで読んでいたようです。 おもしろくは読んでいたようなんですが、一言、

「僕は本当はこういう本、読んじゃいけないんだ。 争いばかりの歴史だ。 無常だし空しさに切なくなるし胸が苦しい。」

と言っていたかと思ったら、こんどは部屋からドタドタ音をたてて飛び出てくるではありませんか。

「ああ、苦しい心臓にかけてツーンと足まで痛みがはしるんだ。 たぶんこのマンガのせいだ、、、。」

いくら風邪でからだが弱っているとはいえ、家族中びっくりです。 誰もあのマンガを読んでそんな目にあったことがなかったし、上の娘は漢字の熟語の勉強にとても役に立ったしおもしろかったと、前々から口にしていました。

「こういう本は僕にはダメなんだ、、、」

とぽろっと話した時、私は

「そういうことを考えると韓国の歴史というのはすごいものよねえ。 民をおもう王様、将軍、宰相の理想像がはっきりしていたし、またそれに近く生きた人たちがいた、、、。 もちろんあくどく悪い人もいるけど、まあそれはどこの世界にもあることだし、私はこの立派な人たちの話に触れるだけでお腹がいっぱいになりますよ  (韓国的な表現で、満足という意味)」

と話していました。

部屋から飛び出てきた夫に私は思わず、

「ほらインターネットでダウンしてイサンなり、大王セジョン(世宗)を見なさいよ。 これこれこれにかぎるわよ。」

と言いながら最近流行っている時代もののドラマをみせました。 (イサンと言うのは朝鮮時代22代目の王様の名前で、特にたまたま今放映されているものは聖君と言われた王様たちばかりです。)

それはそうとして,今回は1000ウオン札の主人公のお話です。

李退溪先生ですが、江戸時代の儒学者たちがたくさんその影響を受けたといわれています。 実はこのお札の絵もある日本人が見た夢での顔がモデルになっているのだそうです。

『千字文』を父親にならいながら「天のうえには何がありますか?」と、その幼い日に質問したという朱キ。(漢字を習う『千字文』の最初の文字が『天』の文字。)

同じように幼い日に「『理』というものはなんですか?」と、師である叔父さんに質問したという16世紀朝鮮時代の大儒学者李退溪(1501~1570)。

「まだよくはわかりませんが、全ての物事に於いて当然そうでなければならないこと(是)を『理』というのではないかと思います。」

静かに考えるようにと時間を与えられ、数日後、『理』とは何だと考えるかねと尋ねる叔父に幼い退溪が答えます。 晩年に於いても、渾天儀(天体の運行と星座の位置を推定する模型)を傍らにおきながらよく眺めていたともいわれています。

「統一教会が偉大なのは、統一教会は神は二性性相の主体としておられ各位としては男性各主体であると結論ずけたことです。」

お父様のこのみ言葉を、私はこの儒学者たちの熾烈な学究と求道の世界を通して、今更にして理解できるようでした。 この原理をわかりかねて、果てしない求道の道を追求したんですね。 私が儒学云々ということはできません。

ここではメシアの人格と思想に出会う為、韓国の歴史が費やした努力の一環を垣間見る立場で紹介していこうと思います。 

早くから、心と体の一致を試みるというか、心と体が一致した生活を営むのが人としての道理と考えた退溪先生は、一歩一歩足を踏み出すごとに、自身の心が一歩に集中しているかどうか、一人で実験しその難しさを悟ります。

一歩を踏むことが習慣的であったり日常的でなく、ちょうど天地が動く重みと同じ重みをもたせるために、その一歩を踏む間に全神経をそこに注がなければいけないのに、その一歩のなかにすでに様々な思いが交差し、歩くという自意識がうまれ心が散乱し分裂するのを感じたといいます。

自分と外界(万物)が渾然一体となる無心の境地に入るよう精進するための心法を得るため、独自の歩行法を研究しました。

「心を全くにして修めることは一番難しいことである。 若いころ私は歩くことを通して心を試してみたが、一歩ふみだすその間に、心がそこに留まっていることすらがとても難しかった。」

と回顧しています。

謙虚にして人を敬うことを信条としていました。 宇宙森羅万象全てが相対関係で成り立っていることを考えると、自分は自分の為に存在するというよりは、相手があって初めて価値を認めてもらえる、、、。

相手あっての自分という存在であると考えると(絶対的な自我とは別に)、本当に原理的な態度ではないかと思います。

「夫婦は男女が初めて出会って、世界を創造してゆくことなんだ。 それで一番親密な関係をなすことになる。 また一方では一番正直で神経を注がなければいけない立場でもある。 それであるから君子の道が夫婦から始まると言う。お互いに敬いあい関係を大切にしていかなければいけないよ。」

孫の結婚にあたって送った手紙の内容です。

 『まず、親不孝な者とは会話をしてはいけない。 二つ目に妻方の家に対し思いやりのない者とは付き合ってはいけない。 最後に妻を追い出すような者とは事業をともにしてはいけない。』

というのがまた、李家の掟だったそうです。 奥さん運に恵まれなかった退溪先生は、最初の奥さんを早くに亡くし、人の勧めで(というか、頼まれて)再婚しますが、この相手の女性が気の触れてしまった人でした。16年間、苦しかったようですが大切にして暮しました。

ある日、先祖の命日に兄嫁たちが集まって祭壇作りの準備をしていると、梨がコロコロって落ちてしまいました。それをその女性はチマ(スカート)の中に隠してしまいます。 隠したことが見つかって、兄嫁たちに責められているところを退溪先生が通ると、弟の顔で今回は許してやろうということになります。 後で奥さんをよんで、どうしてあんなことをしたのかねと訊ねると、梨が食べたかったんだと答えるんですが、梨を剥いて食べさせてあげるんですね。

 亡くなる少し前の弟子との会話では、

弟子;動いている時は、心をしっかり保つことが、もっと難しいようです。

退溪;静かで落ち着いたなかで、心の根本をたてなければいけない。             

弟子;ふと心の中で荷車をひっくり返したように、ぐらつくことがありますがどうしてでしょうか?

退溪;それは気運が安静でないからだ。心というものはもともとは、過ち無く落ち着いているものだから、安静にさえすればよいのだ。

弟子;先生は聖賢の勉強を全うされましたか?

退溪;どうして成したといえようか? 私は静かで落ちついている中、厳粛で敬う心を保つ時は、時として心が勝手に暴れだそうとする気運を、免れることができるが、そうできない時もある。 ふとした折りに酒を飲んで言葉のやり取りをすると、怠慢な心をもって妄りやたらに思考する時もあった。 こういう点は私がいつも怖れ、気をつけていることである。

亡くなる時が近ずきながらも、自身が聖賢の境地に入っていないことを嘆き、もっと気をつけるべきだと自分を戒めています。

もともと病弱で、晩年にひどい肺病で床にふすようになりますが、亡くなる日には、よく晴れた昼間の時間帯を過ぎて、夕方吹雪のように天候が急変したそうですが、伏していた身体を起こしてくれるよう弟子に頼み、きちんと正座をして静かに息をひきとります。

「理」を追求することに始まり、その如くに生きる為に身を捧げ、最後まで真理を探し続けた生涯でした。

鈴木喜久子

コメント

  1. いしい より:

    初めまして。私は在日韓国人3世で、一応食口です。女です。
    鈴木さんは韓日祝福を受けられて、韓国在住なのでしょうか?
    私は47才で子供が二人います。
    韓国の事を知りたいなぁと思っています。
    もし良かったらお返事下さい。

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